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コーンカーン・ルンサワーン

photo by Bernie Ng

コーンカーン・ルンサワーン(Kornkarn Rungsawang)

タイ/ダンスアーティスト
1988年、タイ・バンコク出身のルンサワーンは、伝統と現代の橋渡しをしようと試みる新しい世代のダンスアーティスト。王宮内で踊られる「古典舞踊」や庶民的な「民族舞踊」といった、さまざまなタイの伝統舞踊の訓練を受けた。
ルンサワーンは、伝統的な運動システムに関する幅広い知識を、現代の身体や都市のリズムに応用し、現在の社会、文化、政治環境を反映した新しいダンス表現を形成している。2007年から振付家ピチェ・クランチェンが主宰するピチェ・クランチェン・ダンスカンパニーのダンサーとして活動している。
ソロアーティストとしては、『Organs』(2017年、バンコク)という、女性の性に焦点を当てたワークショップを含むダンスシリーズを代表的なプロジェクトとして発表。女性の性器が、新しいダンスの表現言語を生み出すためのインスピレーションとなった。
ルンサワーンは城崎国際アートセンターでのレジデンスで本作を発展させられることに感謝しており、日本の精神的・文化的慣習との比較を行うことで、精神性や信仰についての理解を深めたいと考えている。

2023 プロジェクト

Dance offering
  • Dance offering - VECTOR#2, photo by Bernie Ng

  • Dance offering - VECTOR#2, photo by Bernie Ng

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コーンカーン・ルンサワーンの『Dance offering』は、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)と、ダンスを組み合わせた発展的なアイデアである。
人間と、より高次の存在や神聖な存在との交渉ツールとして、神聖な存在に願いや要求をするためのツールとして、踊りを使っているタイの伝統的な「RUM-KEA-BON」をアップデートしたハイブリッド・ダンス・パフォーマンスである。人を、ただ高次の存在から施しを受ける存在としてではなく、願いが(成就した)かなえられた際には、引き換えに何かを与えられる存在としてとらえている。

『Dance offering』は、インタラクティブな没入型パフォーマンスで、観客はデジタル神社に願いや祈りを捧げる。デジタル神社とは、希望、願望、信念が宿る仮想空間であり、俗世間と神の間の交渉のための仮想空間でもある。ルンサワーンは、ダンスを通して、観客たちの願いや祈りをデジタル神社の高次の存在に「送る」手助けをする。そして誰かの願いや祈りが叶ったとき、彼女はダンスを高次の存在へと贈る。
言い換えるなら、ルンサワーンは現実空間とデジタル空間、死すべき世界と不滅の世界、願い・祈り・欲望と成就・満足・成功の間の仲介役となる。