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2019年10月26日

『shuffleyamamba』出演者インタビュー【上野愛実】

2019年10月5日(土)、6日(日)に出石永楽館にて世界初演を行った『shuffleyamamba』。
クリエーション中に出演者ひとりひとりに行ったインタビューを公開します。
一人目は、上野愛実さん。

【きっかけはオーディションに落ちた日】

―― 『shuffleyamamba』への出演のきっかけは?

上野:もともと神戸にある『NPO法人DANCE BOX』(https://db-dancebox.org/)っていうところでダンス留学をしていました。卒業してからもずっとダンサーとして参加したり、自分で振付したりする中で、たまたま余越さんと出会って、作品に出させてもらいました。その時、「この人すごくおもしろい」と思って。いつかまた出たいなぁって思っていたんですよ。そしたら、別のオーディションに落ちた日に、余越さんから「(『shuffleyamamba』に)出てくれませんか」っていう連絡が来て。なんか不思議な縁やなぁって思いました。

―― もともとダンスをやられていたのですか?

上野:小学校2年生くらいからクラシックバレエをやっていました。でも私、週1回の稽古をどうやって休もうか、ずっと考えてた(笑)。高校生くらいになって初めてちゃんとやろうって思ったんです。初めて劇団四季の作品を観に行って「こんなにダンスを頑張っている人がいるんや」って驚いたのがきっかけです。「自分は小学校2年生からバレエをやっているのに、何故こんだけしかできひんのか。あんなに踊れる人がたくさんいるのに」って。

大学も照明家になろうと思って京都造形芸術大学の舞台芸術学科に入ったんですけど、選択するコースを間違えて演技をするコースに入っちゃった(笑)。やる気さえあればいろんな授業が取れたので、まったく問題なかったんですけど。先生たちが個性的で自分の考えを覆してくれるのがすごくおもしろくて、自由でいいなぁって思ったんですよ。それが結局いまダンスをやるようになったきっかけかもしれません。

 

【型に入るだけでは、踊りにならない】

―― バレエの振付だけでなく、作中には日本舞踊の振付を踊ったり、上野さんの場合は台詞を喋ったりするシーンも登場します。伝統的な型のある振付と、コンテンポラリーダンスのような自由な動きとで、体の感覚の違いは、ありますか?

上野:うん、違いは、ありますね。インタビュー前に質問をもらった時に、すごく分かるなと思いました(笑)。

私、クラシックバレエをずっとやってきたから、型に入ることは幼い頃から慣れているんです。ただ、例えば日本舞踊は自分の中に全く無かった型と、全く無かった動きの「間」がある。憧れもあるし「この『間」めっちゃ好きやなぁ」と思うんやけど、「素敵。こんな風にしたい」っていう思いと自分がやっていることのギャップが、かなりあるんですよね。その型に入ってみて、それをどこまで自由自在に動かせるようになるか。型に入るだけでは踊りにならへんから、そこからどうやって自分のものにしていけるか……ということを、今回はすごく考えさせられました。

この作品を通じて、日本舞踊の先生に振付を教えてもらったり、砂山(典子)さんからも、(福岡)さわ実さんからも、もちろん余越さんからも、みなさんのダンスとの向き合い方を、全部自分の中に入れさせてもらっているようでした。

ただ、「じゃああなたは?」って問われた感じがしたんですよね。いろいろ提示して、ていねいに教えてくれる人もいれば、見て学ばせてもらう人とかいらっしゃる中で、「じゃあ私は? ダンスとどう向き合っているのかな」「どういう風にしたいのかな」って、考えるようになりました。

でも少なくとも「こういう動きしてみたい」「こういう『間』でやってみたい」という意思は、自分にはちゃんとあるんやなって再確認できたというか。学んだダンスの型を借りてくるだけじゃなくて、ちゃんと自分で構築していこうという意思が、自分の中にもあるんやなって気付けたのはおもしろかったです。遅いかもしれないけど(笑)。

 

【怖いから見るのをやめるということを、やめよう】

―― 本作では、女性的な性や身体を象徴するシーンや振付が数多くありましたが、これらに対する戸惑いや恥ずかしさなどはありましたか?

上野:作中で、あるインタビューの音源を台詞として話すんですが、初めて元の音源を聞いた時は「うん、そうなんや」って、すんなり(聞けた)。私の中で受け入れる態勢ができていたからかもしれないですけど。

19歳くらいの時、大学の演技の授業で『ヴァギナ・モノローグス』という戯曲を扱ったことがありました。題名を見た瞬間「やばい」って思ったけど、とりあえず読んでみたら意外とおもしろくて。こんな話を誰かとしたことなんて無かったし、そういう性の話をするのは、あかん気がして。でも、大事なことやなって思ったんです。自分にちゃんとあるものやし、使ってるものやし。

その出来事がきっかけで「怖いから、分からないから、見るのをやめよう」っていうスタンスを、まずやめようって思いました。よく分からないから怖かったり恥ずかしかったりしていたけど、ちゃんと読んでいったら自分の生活の地続きにあるものばっかりで。

だから今回も、性にまつわる題材を扱った台詞ですが、何の戸惑いもなかった。むしろ、「こんな台詞を言ったら、私はどうなるかな」って。

 

【社会と向き合うためにダンスが必要だった】

―― 最後にお伺いしたいのは、どうして踊り続けているのか、ということについてですが……。

上野:何やろな、いろいろな理由がありますけど、うーん。

私は、中学生くらいの時に周りの環境のストレスとかあったんやと思うんですけど、髪の毛がすごい抜けたことがあったんですよ。見て分かるほどに、聞かれるほどに無くて。だから写真を撮られたり人前に立ったりすることが、すごく嫌になったんですね。それと同時に「このままやったら私、社会に出た時に生きていけるのかな」って、心配になった。

その時もクラシックバレエは続けていて、年に1回、発表会もあったけど出るかどうかをすごく悩んで。でも「髪の毛はないけど、それでも舞台に立とうかな」って。そうしないと、もう私は社会に出られなくなっちゃうんじゃないかなって、思ったんですよね。

たまたま私がバレエをやっていたから、人前に出る機会があったけど、出ないことだってできました。自分で舞台に出るかを選択できる状況だった。けど、私はやるって決めたから。

ダンスがあったから、受け入れられた。髪があろうがなかろうか、完璧に綺麗な状態じゃないと人前に立ったらあかんとか、そういうこともない。自分が社会と向き合うためにダンスが必要やった。今も、そう思ってます。

 

(聞き手:インターン笠田優奈・立花実咲・和田奈那美/編集:インターン立花実咲&KIAC)

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