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2019年10月28日

『shuffleyamamba』出演者インタビュー【大崎晃伸】

2019年10月5日(土)、6日(日)に出石永楽館にて世界初演を行った『shuffleyamamba』。
クリエーション中に出演者ひとりひとりに行ったインタビューを公開します。
4人目は、大崎晃伸さん。

【男性の身体を通して見方を変える】
―― 大崎さんは、作品に登場する唯一の男性ダンサーですね。

大崎:そうですね。この作品の主役は女性芸能者だと、僕は思っています。女性芸能者の歴史が今のコンテンポラリーダンサーにどう繋がっているのかを考えている作品でもあると思うんですけど、女性芸能者というのは、ある種、男性に見せる芸をやったり男性のために踊ったり歌ったりしてきた人たちです。男性というのは見る側だったんですよね。男性の身体を持つ僕がいることで、男が見て女が見られる、という構図になります。けれど、作品の中でその構図を反転させるというか。僕のパフォーマンスを通して、女も見て男も見られるという場面に反転できたらいいなと思っています。

大崎:それから、作品の中での僕の役割としては、なんでもありのコンテンポラリーダンスの象徴。僕のダンスはめちゃくちゃですけど、そういう体も入れ込んでしまうコンテンポラリーダンスの器の広さを、示す存在なのかな。だから作中で決められた振りはやっていなくて、自分で考えたり他のダンサーや振付家と一緒に考えたりしたものと、ほとんど即興です。

―― 余越さんと少しお話させていただく機会があった時に「私は振付はしない」とおっしゃっていて。ダンサーから出てくるものを編集していく、そういうキャッチボールであの作品は作られていると伺いました。

大崎:そうですね。ダンサーたちがアイディアを出して、余越さんが変更したり深めたりという形で作っています。でもダンサー同士でもお互いにアドバイスするし、一緒につくる関係がうまれてきていると思います。作品を構成して、まとめあげて表に出す責任は、余越さんが持っています。ダンサーも同じようにパフォーマーとして責任を負っています。完成した振付をダンサーが一方的に受け取るやり方ではなくて、コラボレーションしている作り方だと思います。

―― クラシックバレエや日本舞踊の振付が登場する中で、一ヶ所だけ大崎さんも伝統的な振付を踊る場面もありますよね。

大崎:そうですね、あのシーン以外は、全部自由。でも振付があると楽な面もあると思うんですよ。自由に踊るということは、完全に自分の選択に委ねられているわけで。選択というのは、意志だけでなく、身体の選択という意味でも。次は何をやったらいいのか、不安や恐怖がありますが、型や振付があればその不安はない。決められた型にどれくらい近づけるかというおもしろさもあるし、振付家が作った振りの理想にどれだけダンサーとして近づけられるかという楽しみ方もあると思います。

 

【一番深いところを見せることで感動させられたら】

―― この作品の重要なキーワードの一つが「継承」ですが、大崎さんが余越さんの前作の『SHUFFLE』から継いだものや受け取ったものはありますか。

大崎:先ほどの見る・見られるの話にも通じますが、僕はその継承されていく様を見ていく側でもあるのかなと思っていて。現場でもそう思うことがあります。例えば、ショーダンスのセクションがあるんですけど、彼女たち(西岡さん、渋谷さん、上野さん)はショーとしての踊りをやったことがなかったし、自分の女性性を際立たせて男性を喜ばせるための踊りに対して、抵抗があったみたいで。そこに砂山さんが入ってきて徐々にためらいがなくなってきたようで、覚悟が定まったような姿を見て、砂山さんから彼女たちへ何かが継承されたのを感じました。伝統と言われるものではないコンテンポラリーダンスの中でも、何かしらが継承されたり受け取り受け取られたりする関係があるんじゃないかな。自分が受け取ったことでいうと、僕はパフォーマーとしては経歴が浅くて、皆さんの方が大先輩なので舞台の出はけのタイミングや自分の舞台上での身体の位置取りの仕方とか、人に見せるダンスの技術を勉強させてもらっています。

―― 作品を構成するもう一つのキーワードは「女性性」ですが、そこに対する戸惑いはありましたか?

大崎:ほとんどないですかね。性的な事柄に対して見てはいけないこととは思っていないし、コンテンポラリーダンスは裸になる作品も多いので。ダンスの世界って、そもそも女性が多くて。バレエをやっているのも、僕の師匠の黒沢美香さんの稽古場も8、9割は女性です。

作品では性に関連しているシーンもありますけど、そういう踊りってなかなか見れない。性的なことって、すごく個人的なことだと思うんですね。普通は人に見せるものではない。一番隠されてる部分でもあるし、同時にその人自身とすごく深く繋がっているものだと思うんです。その人自身の一番深いところを見せることで、人を感動させるパフォーマンスとして成立したら、すごいんじゃないかな。普段見えないものもだからこそ、見たい気持ちもあるし。性にまつわる表現の中で、その人自身が出てくるパフォーマンスをして、誰かに「すごいものを見たな」とか「この人こういう人だったんだ」って感動させられたら、すごいことだなって。自分も誰かを感動させることができたらいいなと思います。

 

【自分が踊ることで踊りの楽しさを伝えていきたい】

―― 最後に、ダンサーさん全員に質問しているのですが、踊り続ける理由を、教えていただけますか。

大崎:身体を動かすこととかダンスをするということは、追求することでもあると思っていて。追求に、終わりはない。プロのダンサーだったら、振付家が指示した通りにすぐ動けないといけない、振付通りに動けないといけないかもしれない。けど、どこまでいっても完璧な振付にはならないし、近づくことしかできないと思うんだけど、どこまで近づけられるかを探るのが楽しいというか。身体を動かしていく中に、今まで味わったことのない感覚や、こんな体の動かし方や見せ方があったのかっていう発見があるんですよ。ストレッチをやっていても同じで、「自分の筋肉はこうなっていたのか」って発見し続けることができる。終わりがないし、ダンスには限りがないのが、おもしろいですね。

僕は、世の中にもっと踊る人が増えたらいいと思っていて。僕は素人に近いダンサーだし、やっていることも自由で型どおりに踊れないダンサーだけど「それでもいいんだ」「踊っていていいんだ」と、示したい。だから、この作品に出演することができて、本当にありがたいです。僕のダンスを見て、踊り始める人が増えたらいいなと思って。逆に僕の踊りは嫌だと思う人もいるかもしれないけど、僕が踊るのは、踊ることとか踊りを見ることの楽しさをいろんな人に伝えていくための手段の一つなんです。

僕が踊り始めたのは、5年くらい前。他のダンサーは、もう何十年も踊ってきた人達ばかりなんです。例えば、20代半ばの若いダンサーだとしても、3歳から踊っているとしたら、20数年のキャリアがある。ダンスを始めたばかりの僕としては、なぜ彼女たちはダンスに惹きつけられるのか、踊り続けているのか……他のダンサーの答えも、聞いてみたいですね。

 

(聞き手:インターン笠田優奈・立花実咲・和田奈那美/編集:インターン立花実咲&KIAC)

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