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2021年4月1日

新館長、新芸術監督就任あいさつ

 
2021年4月1日より、城崎国際アートセンターの館長に舞台芸術プロデューサー・介護福祉士の志賀玲子氏が、芸術監督に劇作家・演出家・小説家の市原佐都子氏が就任いたしました。新体制のもとで、昨年2020年にスタートした豊岡演劇祭、4月に開学する芸術文化観光専門職大学等とも事業連携を行い、国内外の舞台芸術シーンや豊岡市の芸術活動を活性化できるよう、スタッフ一同気持ちを新たに進みたいと思います。今後とも城崎国際アートセンターをよろしくお願いいたします。


新館長あいさつ

42歳まで私の生活は舞台芸術一色でした。クラシックバレエ→演劇学校→小劇場でのバイト→制作・プロデュースという仕事との出会い、舞踏家との結婚。子どもがいないので地域社会とも疎遠で、まさに劇場の界隈でのみ暮らしてきました。2005年、ALSという原因も治療法も不明、生活のすべてに介助が必要となる難病を発症した友人の支援に参加。生死の間でもがく人に深く関われば関わるほど、私はほとんどすべての芸術を受けつけなくなっていきました。光と力をあたえ、道を示してくれる強い芸術を心の奥底では渇望しながらも-。

そのような訳で10年近く舞台芸術と離れていた私に、突然、オリザさんから館長職の打診がありました。豊岡で、KIAC開館以来、今も現在進行形で起きていることは、国内で前例のない事態だと大変興味を持っていました。そして、豊岡の各地を案内され、豊かな自然と静けさに触れた時、人々の暮らしと近いこの場所で、もう一度、舞台芸術と人々をつなぐ仕事に関わってみたいという気持ちになりました。アーティストが安心して創作に取り組めること、スタッフが健全に仕事に打ち込めること、人々が自分にとって大切だと思える芸術と出会えること(たくさん、でなくとも、ひとつでも)。そのために、舞台芸術の外からの視点、豊岡の外からの視点を持ちながら、努めて参ります。どうぞよろしくお願い致します。

城崎国際アートセンター 館長
志賀玲子


新芸術監督あいさつ

初めて城崎温泉駅に降り立ったとき、まず情緒ある温泉街の町並みに感銘を受けました。小さな川沿いに柳が揺れていて、そこを浴衣の人々が下駄をカランコロンと鳴らしながら歩いているのです。そして滞在してみて、温泉に110円で入れて天国かと思いました。温泉街から絶妙な距離にある城崎国際アートセンター(KIAC)は、やろうと思えばとことん創作に集中できる場所です。

私は2019年、『バッコスの信女 - ホルスタインの雌』という作品をKIACにて滞在制作しました。執筆や稽古ほか、地元の女性を募集し劇中歌を歌うワークショップを行い、その時間は私にとって貴重な体験になりました。作品が舞台芸術にあまり馴染みのない地元方々に開かれることで、作品をより客観的に捉え、一般的に「わかりやすいもの」ではない自分の作品を、より届けるにはどうすればいいのか、という視座をもつきっかけとなりました。またそこに参加してくださった方々も、作品の言葉に出会いそれを声に出すことで、普段の日常生活では考えないことを考えたり、日常生活の抑圧から少し解放される時間となったのではないか、と限られた時間ながら双方に影響をし合えた手ごたえを得ました。この作品にて、岸田國士戯曲を受賞することが叶いました。私にとって節目となる作品を創作させてもらったKIACには大変感謝しています。

この地の皆さんの他者を受け入れる力を信じています。台本を書き上げた夜、湯あたりをおこして脱衣所でぶっ倒れて血を流す私を「御所の湯」の従業員の方は優しく介抱してくださいました。(本当に申し訳ありませんでした。)と言うのは半分冗談ですが、古くから作家がこの地に魅了されてきたのも、温泉と、この地に住む人々の他者を受け入れる土壌があるからでしょう。だからこそ、素晴らしい作品がたくさん生まれているのだと、滞在制作した身として肌で感じました。この場所が引き続き、そして益々、アーティストにとっても、地元の皆さんにとっても魅力あふれる場所であるように芸術監督として努めます。どうぞよろしくお願いいたします。

城崎国際アートセンター 芸術監督
市原佐都子


志賀玲子舞台芸術プロデューサー、介護福祉士
1962年大阪府生まれ。1985年神戸女学院大学卒業後、一般企業勤務を経て、演劇制作事務所設立。1989年「ヨコハマアートウェーブ89」(横浜市主催)事務局スタッフを皮切りにコンテンポラリーダンスを中心とする舞台芸術企画制作者として、兵庫県伊丹市立演劇ホール(アイホール)プロデューサー、びわ湖ホール「夏のフェスティバル」プロデューサー、(一財)地域創造「公共ホール現代ダンス活性化事業」コーディネイター、大阪大学コミュニケーション・デザインセンター特任教授を歴任。兵庫県立ピッコロ演劇学校1期生。2007 年からALS (筋萎縮性側索硬化症)を発症した友人の在宅独居生活「ALS-D プロジェクト」をコーディネート、介護にもあたる。「スペースALS-D」と名付けたダンススタジオを併設した京町家で、ダンサー等の友人がヘルパーの資格を取り介護にあたる暮らしは、首都圏外で初の24時間他人介護による在宅独居実現として、新聞、TV などの取材多数。
Photo: igaki photo studio

市原佐都子劇作家・演出家・小説家
1988年大阪府生まれ福岡県育ち。桜美林大学にて演劇を学び、2011年より劇団Q始動。人間の行動や身体にまつわる生理、その違和感を独自の言語センスと身体感覚でとらえた劇作、演出を行う。2011年、戯曲『虫』にて第11回AAF戯曲賞受賞。2017年『不美子不毛話』が第61回岸田國士戯曲賞最終候補となる。2019年に初の小説集『マミトの天使』を出版。同年『バッコスの信女-ホルスタインの雌』をあいちトリエンナーレにて初演。同作にて第64回岸田國士戯曲賞受賞。公益財団法人セゾン文化財団セゾン・フェロー。2019年1月アーティスト・イン・レジデンス事業に採択されKIAC で滞在を行う。2020年『バッコスの信女 - ホルスタインの雌』で豊岡演劇祭に参加。
Photo: 佐藤瑞季

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